刀があまり実戦で使われなくなった時代には、日本刀の斬れ味を確認するには、刑死した人間の体を斬ることで確認していました。どの部分を斬ったのか、胴をいくつ重ねて斬ったのか、鍔に重石をつけて斬ったのか、どこまで刃が届いたのか…など、試し斬りに関しては、さまざまな記録が残っています。しかし、中にはその斬れ味に異名がつけられるほど、優れた斬れ味を持った刀もありました。籠釣瓶(かごつるべ)、立袈裟(たちげさ)、古袈裟(ふるげさ)、棚橋、朝嵐、通抜(とおりぬけ)、八文字、大谷川、踊仏、などがあります。どれも斬れ味から連想して名付けられています。例えば籠釣瓶は、籠で作られている釣瓶(井戸の水をくむための桶)は水が溜まらずに落ちていってしまう。つまり、水も溜まらないレベルの斬れ味と言っています。棚橋は、欄干のついていない簡単なつくりの橋のことを言います。その姿が棚のように見えることから棚橋と呼んでいます。欄干がなければ、当然すぐに落ちてしまいます。試し斬りをした首も、同じように簡単に落ちるという意味です。大谷川は、日光にある大谷川を指しています。これは華厳の滝のことであると言われています。華厳の滝は、高さが97メートルある岸壁を一気に落下する大きな滝です。素早く落ちるというところから、よく斬れるという意味を連想させています。踊仏は、袈裟斬りに当てたものと言われています。袈裟をかけている仏が踊ると、肩にかけていた袈裟が簡単にすべり落ちてしまうという意味からです。試し斬りの異名は数多くあり、どこか洒落たような単語選びをしていることが分かります。試し斬りによってつけられた異名は、刀の茎に刻むことで称賛をして、その凄さを示しました。 |
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試し斬りの異名