象徴的で、信頼の証でもあった刀が、現代ではほとんど失われてしまったことは、いささか、やや悲しいという風にも言えるかもしれませんね。ただ、刀はただぶら下げているだけではなく、治安が現代よりもあっとうてきに悪かったとされている江戸時代やそれ以前の時代においては、もしも侍が道端で敵対する関係の侍から、急に襲撃を受けたとすると、その場で命をかけた戦いが始まっていたわけです。現代から考えると想像することは容易ではないですが、一振りの気の迷いや、刀の動きのミスが、そのまま命を落とすことに繋がっていた時代もあったということは驚くべきことで、しかも、それが数百年前まで続いていたというところに武士道の歴史の長さと強さを感じることができます。そして、その歴史とともに日本刀があったことも忘れてはいけません。鉄砲が種子島に伝来するまでは一般的に最強の武器というのは日本刀で、主に内紛のようなものがおこった際にも、切りつけあうのは日本刀であったわけです。このように、身近に起きた危険な出来事を会話で解決するわけでもなく、裁判をするわけでもなく、日本刀をお用いて戦うような形で決着をつけていたことはにわかに信じられませんが、事実であるのです。ともかくも当時の武士は、そのような事態に備えて日々鍛錬していただけではなく、自分自身を高めるために、このような厳しい鍛錬を積んでいたということは、尊敬してもしきれないことであると言えるでしょう。現代では、刀を持つ者同士が刀を向き合うということはまったくと言っていいほどなくなりましたが、その精神だけでも、現代だけでなく未来へと受け継いでいくことは、先人たちが残してきた偉大な軌跡を受け継いでいくことが重要だと言えるでしょう。